テレクラ女性のたそがれのピンクショーツのなかはびしょ濡れ

テレクラ女性の桃色のショーツの中にスルリと指を忍び込ませ、私の指先が彼女の陰唇をそっと押し開き、その先端をゆっくりと挿入していったとき、私は、彼女の陰部の内部にすべりこむのはこれが初めてではない、というような奇妙な感覚にとらわれた。
それは、この女性と実は過去に会ったことがあり、閨のなかで性交を重ねていた記憶がふと蘇ってきた、というような質のものではなかった。
この女性とはテレクラのツーショットダイヤルを通して、今日はじめて出会った女性なのであり、自分のどこを探っても、この女性との性行為の記憶は存在しないのである。
ところが、ショーツのなかに手をすべりこませ彼女の女性器に触れ、彼女がその薄く紅を塗った唇をかるく開いて喘ぎの手前のような吐息を漏らした瞬間、私の脳裏に蘇ってきたのは、以前もどこかで触れたことがある、という手触りの彼女の陰部の記憶だったのだ。
ショーツに指をすべりこませたときのその感覚は、一瞬の到来とともに去っていったのだし、めくりあげたブラジャーからあらわれた彼女の茶褐色の乳首を舐めながらショーツのなかで指を出し入れする段階には、「私はいま、はじめて彼女を抱いているのだ」という感覚のほうがより強くなったのだった。
しかし、彼女のショーツを脱がしたあとのむきだしの女性器に対してなされた手マンや、彼女の漆黒の陰毛に顔をうずめるようにして果敢におこなったクンニリングスの時間のなかで、私が、「現在」のなまなましい性の光景と同時に、あのショーツに手をすべりこませた瞬間ふいに到来したデジャヴュのような感覚にとらわれていたというのも事実だ。
彼女の服を少しずつ剥いでゆき段階を踏んで裸に近づけ、しかし、完全なる裸体にならないように遠回りを重ねて、そして、様々な姿勢をとってもらいながら彼女の性器を手でまさぐり、あらためて舌で舐め回しもしながら、「間違いない、この女体は、私にとっては、はじめての女体だ」という確信を深めつつも、私は、身体のどこかに「とげ」が刺さっているようなもどかしい状態でいた。
ところで、私はフェラチオがあまり好きではなく、フェラチオをされているときは「休憩時間」というか、漫然と男根を舐められながらぼんやりと考え事をしてしまうことが多いタイプである。
だから、シックスナインの体位でもって彼女が私の陰茎をいつくしむようにしてフェラチオを始めたときも、私の意識は、ふいに「いま、ここ」の性行為から離れてしまい、遠くの記憶を茫洋と探るようになっていった。
彼女のショーツに指をすべりこませたときの存在しないはずの記憶がふいに蘇ってきたのは、彼女にフェラチオをされながら、自分は彼女の陰核を舌の先端でペロペロと舐め回しているその最中だった。
私は、過去に、ツーショットのテレフォンセックス中に、彼女のショーツに指をすべりこませる「時間」を経験していたのだった。
そのテレフォンセックスの相手は、いま、私の目の前にこぶりでかわいらしいお尻を押し付けながら健気にフェラチオをしている彼女では、なかった。いや、なかったはずだ、と思う。
即アポもせず、テレフォンセックスだけですませたあの顔も知らない女の子。あの女の子の耳元にささやきかけるようにして、私は、確かに、「声」と「言葉」のみでもって、今日の彼女のショーツのなかに指をすべりこませたのとまったく同じような、ショーツへの侵入をしていたのだった。
声と言葉で与えられたショーツの情報と、私が言葉の指先で彼女のショーツにすべりこんでいくときの速度、そして、ふいに受話器の奥からもれたように思われた「吐息」の気配。それらの記憶が、今回、生きた女性の実際のショーツに指を侵入させたときのすべての時間と重なった。
もしかしたら、あのときの女の子は、いま、眼の前でお尻をつきだして私の陰茎をしゃぶっているこの女の子なのかもしれない。
「ねえ」と語りかけると、彼女は口から陰茎を引き抜き、お尻越しにかわいらしい顔をこちらに振り向けてキョトンとした顔で私の顔を眺めた。
「ねえ、むかし、テレフォンセックス中にショーツのなかに指を入れられたことがある?」、私の喉からは、その質問が出かかっていた。しかし、彼女のフェラチオ直後でやや唾液が垂れたキョトンとした愛らしい顔を見ていると、そんなことを聞くのがなんだか野暮に思われたのだった。
「いや、なんでもないよ」、そういって、私は彼女を押し倒して、先程まで彼女の口のなかでしゃぶり倒されていた唾液まみれのペニスを彼女の膣口へとねじ込んだ。
彼女が短く「あっ」という声をあげた。そのわずかな声の感触は、ショーツのときと同様、また私に「いつか、どこかで、この子と……」という見知らぬ時間や記憶の遠くからの呼び声のようにして私の内側で響いた。眼の前で高速ピストンで乱れているあなたは、一体だれなのだろう。